河原町のアンジェ


 ほんの日が暮れるまでの3時間のつもりが、気付けば5時間も寒空の下を自転車で走り回っていました。当初の目的は確か、スリッパまたはルームシューズを買うこと。しかし目当てのものは売り切れで、そこで何かが切れてしまったのです…


 河原町丸太町から三条、ロフトにマツキヨ、四条烏丸から御池の大垣書店新風館ビレバンまで、長い旅でした。志津屋の菓子パンに心奪われ、雑貨屋さんの店先に吸い寄せられ、本屋で立ち読み。テストの前日にすることじゃないことは重々承知しております、はい。




 でもわたしは後悔していません。なぜなら素敵な本棚に出会えたからです。
それは河原町三条のインテリア雑貨屋さん、ANGERS(アンジェ)の本棚です。


 わたしにとってアンジェは、おしゃれ雑貨のイメージが非常に強いお店です。古くさい、おしゃれというよりださめが好きなので、ちょくちょく覗いてはいましたが敬遠気味でした。


 最近、おしゃれな「セレクト本屋」とでも言うような若者向けの本屋さんが増えていますが、イマイチな場合が多い。ただおしゃれなだけで、おもしろくない。知的好奇心が満たされなければ本屋とは呼べません。



 その点アンジェのブックコーナーは、限られたスペース(縦横2mくらい)に最小限の書籍・雑誌が置いてあり、そこに選ばれた本たちは、なかなか普通の書店(ビレバンも含む)では面出し・平積みされないような、重箱の隅をつついたような、一癖も二癖もある本たちばかり。そのどれもが作者やデザイナーの気持ちが伝わってくるようなあたたかいものなのです。



 気になった本は、中谷宇吉郎という雪について研究をした科学者が書いた随筆集と、COW BOOKSを立ち上げた松浦弥太郎の『最低で最高の本屋』です。中谷さんは湯川秀樹と同年代の人で、雪についてのことだけでなく、本の中にはそういった科学者たちとの交流も記されていました。岩波書店から出ているのですが、装丁がとてもよいです。
 松浦さんの本は、「就職しなくていいんだ」という安易な考えを具現化したのではなくて、「就職しない」ことは「仕事をしない」ということではない、ただそういう選択肢もあるんだよ、そしてその選択には辛いことも楽しいこともあるんだよということを教えてくれます。そこからレイモンド・マンゴーの『就職しないで生きるには』も読みたくなったのですが、ビレバンにも大垣にも無かったのです。残念。


ぜひ一度来店してみてください。

どの本も全部手に取りたくなりますよ、きっと。